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当分野は、歯科補綴学、高齢者歯科学、顎顔面補綴学、摂食嚥下リハビリテーション学、顎口腔機能学、臨床口腔生理学、口腔解剖学、医療工学、臨床疫学などを基盤として、超高齢社会において重要な課題である「生涯にわたるQOLと健康の維持」に貢献するための研究を幅広く行っています。ここではその主なものをご紹介します。
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摂食嚥下の口腔期と咽頭期は、多くの器官が協調しながら活動し、巧妙なバイオメカニクスによって食塊の形成・搬送・食道への送り込みを行っています。そのメカニズムの客観的・定量的評価は、摂食嚥下障害の診断・治療・リハビリテーションを精密化・効率化するために重要かつ喫緊の課題となっています。当分野では、小野教授と堀准教授(新潟大学摂食嚥下リハビリテーション分野)が大阪大学において開発した舌圧測定システム(スワロースキャン)を用いて国内外の多くの大学や研究機関と共同研究を行い、この分野において世界をリードする成果を挙げつつあります
舌圧測定システムを用いることで、加齢に伴う舌機能低下だけでなく、脳卒中急性期・慢性期、筋ジストロフィー、ダウン症、パーキンソン病などさまざまな疾患の嚥下時舌運動異常と嚥下障害との関係が明らかとなりました。 本システムを拡張して喉頭運動との同時記録・解析ができるシステムを開発中で、嚥下の口腔期と咽頭期の協調性を基準化することにより、より正確で包括的な嚥下障害診断システムを構築しています。
この他に、舌圧測定システムを用いて、さまざまな嚥下手技の効果の検証や、咀嚼嚥下困難者用食品の物性が生体に及ぼす影響など、幅広い応用研究を展開しています。
舌圧測定システム(スワロースキャン)を用いた研究論文リストはこちらをご覧ください。
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当分野では、もう一つの咽頭期嚥下の評価法として、圧電素子を応用したピエゾセンサによる嚥下機能評価訓練装置を試作し、特許出願しています(特願2011-084024)。この装置在宅の患者への使用を想定したもので、反復唾液嚥下試験(RSST)を行う際にこの装置を利用するとピエゾセンサが触診の代わりをして装置を介した自動検査が可能になります。
被験食品としてグミゼリーを用いた咀嚼能力評価法は大阪大学名誉教授・野首孝祠先生によって3つの手法(手動法、全自動法、スコア法)が確立され、「いつでも・どこでも・誰にでも」咀嚼能力を簡便かつ定量的に測定できるようになりました。当分野では、これらの方法を臨床的評価として導入し、患者さんの病態や治療効果の客観的評価を行うとともに、大阪大学大学院医歯学総合研究科(有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野、予防歯科学分野)、国立循環器病研究センター(予防健診部)との共同研究である「吹田研究」で用いて、都市部一般住民の咀嚼能力と健康(特にメタボリックシンドロームと動脈硬化性疾患)との関わりについて、前向きコホート研究を行っています。
「食べる」という行為は、たんに顎や口の動きだけで行われるのではなく、全身を使った運動です。正しい姿勢がとれなくなった人は、ものを食べる上でもさまざまな不自由が生じています。当分野では、6自由度顎運動測定装置(TRIMET)などを用いて、習慣性開閉口運動や捕食時の頭部と下顎の運動様相について解析を行ってきました。現在、モーションキャプチャを用いることにより、食べ物を捉える「捕食」から咀嚼を経て嚥下に至る過程の下顎や頭部の運動様相だけでなく、体幹の動きについても検索を行っています。姿勢が咀嚼運動に与える影響を明らかにすることにより、在宅療養患者に対する摂食支援へとつなげていきたいと考えています。